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突然スイッチの入った大ゴイの入れ食いに
一時はどうなるかと思ったが
10時30分の満潮が近付くにつれ
アタリが遠のいた。

満潮時刻を過ぎてもアタリは訪れず
静かな時が2時間ほど流れた。

「チュレマスカ?」

ビミョーなイントネーションで
背後から声。

振り返ると
あごひげを蓄えたガイジンさんが自転車にまたがっていた。

なんと、コイ釣りの下見にやってきたという。

彼の名は
シルヴァン・ガラスさん。

フランス人で映画監督だという。

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一時間ほど話してすっかり打ち解けた福安さんとシルヴァンさん

大の日本好きということだが
聞いてみると
京都にも奈良にも行ったことがないという。

仕事でフランスと日本を行き来しているそうだが
日本にいるときはもっぱらコイ釣りをしているのだとか。

つまり、日本が好きなのは
コイ釣りを堪能できるからだという。

ホームグラウンドは多摩川で
荒川や江戸川にもよく行くそうだ。

シルヴァンさんいわく
今の日本のコイ釣りは
20年の前のフランスとよく似ているという。

ダンゴエサが主流だった20年前は、
フランスではコイ釣りというと
おじいさんたちの趣味だった。
若者にはほとんど縁がなかった。

しかし、ボイリーがイギリスからやってきて
ヘアリグやバイトアラームなど
現在のカープフィッシングのスタイルが確立されてから
一気にブレイクし
今や釣り人口の6〜7割がカープフィッシングファンという。

もともと
イギリス、フランス、スペイン、ドイツといった
西欧で盛んだったのが
ここ数年は
ルーマニア、チェコ、ハンガリーなど
東欧でも大ブレイク中だとか。

「今はインターネットなどがあるから
日本でこのスタイルが普及するのに
それほど時間がかからないかもしれませんね。
カープフィッシングは最高の趣味だと思います」

とシルヴァンさんは、はにかんでいた。

映画監督をする傍ら
フランスでは
テレビの5チャンネルで
動物もののドキュメンタリー番組も制作しており

「いずれはコイ釣りのムービーも撮りたいです」

と熱く語っていた。

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シルヴァンさんが帰ってすぐに
再び大ゴイラッシュが始まった。

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なんとダブルヒットも2回あり
結局、16時30分までサオをだして
11回アタリがあり、取り込んだのは9尾。

そのうち、90センチ台が2尾で
60センチ台が1尾
残りはすべて80センチ台。

「じゃあ、これから愛知に帰ります」

福安さんはそう言って
黄昏の多摩川を後にした。

多摩川のコイも凄いが
福安さんの情熱と行動力、そして研ぎ澄まされた釣技には
ただただ脱帽だ。

(山根)