和歌山県太地町のイルカ漁をテーマにした映画
THE COVEがアカデミー賞の長編ドキュメンタリーを受賞した。

イルカ漁をテーマにしたというと響きはいいが
イルカ漁を一方的に批判した告発ものらしい。

イルカはかわいいから殺したらかわいそうということなんだろうが
なぜ、アメリカ人はそういう発想をするんだろうか。
かわいくても、かわいくなてくも、命の重さは同じだろう。
彼らの主食ともいわれる牛はかわいくないんだろうか。

ぼくの父は貧しい農村で育った。

子牛も何頭か飼っていて
子どもだった父は毎日子牛の世話をしていた。

子牛がある程度大きくなると
肉屋に卸さなければならない。
弟のように可愛がっていた牛を
業者に渡すのは胸が張り裂けそうだったが
家族が食べていくためには、仕方なかった。

子どもだった父が泣きながら牛を業者に渡すと
牛も自分が殺されるのが分かるのか
決まって涙を流すのだという。
涙を流しながら少年に向かって何度も泣くのだと。

「牛は自分が殺されるのが分かるんだぞ」

幼いころ、何度となく父から聞かされた話だ。

その話を聞いた夜
ぼくは布団に入ってよく泣いた。
「もう牛なんて食べない」
とその時は強く思うのだが
1か月もするとすっかり忘れて
「たまには肉食べさせてよ」
なんて母に言ったもんだ。

牛や豚をもりもり食べて
イルカを食べる文化を批判する。

これを人間のエゴといわずして、なんと言おうか。

(山根)