現在発売中のつり人7月号でも掲載していますが
多摩川下流部で採取した天然アユを
上流部にくみ上げ放流する試みが
昨年に引き続き、今年も行なわれています。

具体的に支流の秋川渓谷に約15000尾
本流上流部の奥多摩エリアに約10000尾が放流済みです。

一昨日の6月6日に秋川のアユ釣りが解禁になり
編集部が取材に行きました。
くみ上げ放流した江戸前アユはまだ掛かる大きさには育っていないようでしたが
取材させていただいたエキスパートの坂本さんは
午前中だけで48尾も釣られました。

昨年は大雨に泣かされた秋川ですが
今年は大いに期待できそうです。

ところで、SNSで多摩川の天然アユのくみ上げ放流に対して
批判的なコメントが書かれているのを見てしまいました。

「そんなことして、どんな意味があるんだ? 税金の無駄遣いするな!」

というようなコメントなのですが
切なくなりました。

アユは本来、川の上流部までソ上します。
が、多くの河川ではダムなどの構造物が
ソ上魚の前に立ちはだかります。

多摩川に関しては
かねてから「魚がのぼりやすい川造り」
を国交省が行なっていて
堰堤に魚道が設けられているものの
それがうまく機能していません。

そのため、大半のアユは河口から20kmほどしか
ソ上することができないのです。

それをすくって、上流部の水のきれいなエリアに
放流してあげようというのが、今回のプロジェクトです。

たしかに、天然アユのくみ上げ放流を行なったところで
株価が上がるわけではありません。
景気がよくなるわけでもありません。

でも、ロマンがあります。

ダムや堰堤ができる前は
夏になると東京湾から多くのアユが多摩川をソ上し
秋川渓谷や奥多摩エリアを目指しました。

それが河川環境の悪化のために
何十年間も途絶えていたのです。

今回、くみ上げ放流を行なったおかげで半世紀ぶりに、多摩川上流部に
東京湾生まれの江戸前アユが帰ってきたのです。

今は上手く機能していない堰堤の魚道を整備すれば
人の手を介さずとも、江戸前アユは多摩川上流部までのぼることができるようになるのです。

拝金主義者には永遠に理解できないかもしれませんが
海と川がつながるということは自然回復の大きな一歩であり
素晴らしいことなんです。

(山根)