読売新聞の書評欄で
ライフネット生命会長の出口氏が
外来種は本当に悪者か?を取り上げ
「環境保護運動に係る必読の一冊であろう」と結んでいました。

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同書は編集部でも話題になっていて
「環境保護運動に係る必読の一冊」だと思います。

先月は養老孟司氏も毎日新聞で書評していましたね。


著者はイギリスの科学ジャーナリスト、フレッド・ピアス。
同氏はもともと、外来種悪玉論者でしたが
世界80ヵ国以上の外来種問題を調査しているうちに
外来種被害のデータがいかに杜撰で、外来種駆除に膨大な費用がかかり
その効果が全く出ていない現実を知ります。

そして、そもそも外来種と在来種を区別している何なのかに気付きました。

外来種と在来種を区別しているもの。それは人間の勝手な思い込みに過ぎません。

外来種排斥原理主義者たちはよく
「長年にわたって構築されたその地域の生態系の均衡が崩れる」
ということをよく言いますが
そもそも生態系に均衡などないというのがピアスの意見。

長い年月を経て今に至る生態系は常に、侵入者たちの脅威にさらされている。
侵入者たちは潮流に乗って、風に乗って、鳥によって、流木によって
さまざまなルートで他のエリアからやってくる。

そこで、いわゆる在来種と外来種の攻防が繰り広げられるが
たいていの場合、外来種は駆逐されてしまう。
しかし、自然環境がダメージを受けていて、在来種が危機に瀕している時に外来種が来ると
生態系の中に取り込まれることがある。

生態系とは長い間、そうやって進化してきた、いや進化し続けているのである。

気候の変化や病気などで常に滅んでいく種がいて
その種の代わりに取り込まれていく種がいるのである。

逆に言うと、外来種が全くいない状況では
その地域の生態系の中の生物の数は減る一方といえます。

近年は自然の摂理に加えて
人間による環境破壊が生態系に大きな影響を及ぼしています。
レッドリストを見れば、在来種が滅びつつあるのは一目瞭然。
だからこそ、外来種が取り込まれていくわけです。

ピアスはヴィクトリア湖やエリー湖を実例に挙げて丹念に検証し
人間が破壊した環境に外来種が入り込み
むしろ自然の回復を手助けしていると論じています。

ひるがえって、日本ではどうでしょうか。

本書に出てくる海外の外来種問題と日本のそれも全く同じです。

具体的な例を挙げるなら
川底の二枚貝に卵を産むタナゴ
岸部の水草に卵を産むフナ
が減ったのはブラックバスに食い尽くされたからではありません。

三面護岸や水質悪化で二枚貝が生息できなくなり
結果、タナゴが産卵できなくなったためで
水草に卵を産み付けるフナなどの在来種も
産卵場がなくなってしまっただけの話。

ブラックバスやブルーギルが移入される前から
すでに在来の魚は環境破壊により激減していたのです。

何十億、何百億円という血税を使い駆除したところで
そもそも完全な駆除などできないことは世界各地の事例を見れば一目瞭然であるし
仮に駆除ができたとしても
自然環境が回復されていなければ、在来種が増えようがありません。

産卵場や育成場を埋め立てたり護岸したりしておいて
在来種が減ったのは外来種の食害と決めつけ
その駆除のために毎年、莫大な血税が注ぎ込まれているというわけです。

外来種の活力と侵略本能を活かして自然の再生を目指すニュー・ワイルド=新しい野生
こそが21世紀の環境保護であるべきであるとピアスは結論付けています。

気候の問題にしても
人間が自然をコントロールできるなんてことはありません。

生態系に正しい姿や均衡なんてものもなく
常に進化し続けているのが生態系であり
人間がそれをコントロールするなんてことはできないのです。