初めて書いた小説が芥川賞を受賞したと話題騒然の
第157回芥川賞受賞作「影裏」(沼田真佑著)を早速読みました。

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処女作が芥川賞ということも興味津々ですが
なんと、作品のテーマは釣りです。
しかも、ヤマメ、イワナの渓流釣り!

芥川賞作品の中で釣りが取り上げられているのは
近年では平成23年の第146回受賞作「共食い」(田中慎弥著)が思い出されますが
「共食い」では釣りがちょっとしたスパイスになっているのに対し
「影裏」は釣りがメインディッシュ。

で、感想はどうだったかというと
期待以上に素晴らしかったです!

ネタバレになってしまうので内容に関しては書きませんが
外道とはいえウグイの自己記録を更新した友人の姿を
「煙草に火を点け、美味しそうに煙をゆるゆる吐き出す。ブルーマーリンを仕留めて葉巻をくゆらす往年のアメリカの釣り師を思わせるような、ちょっと時代がかった充実ぶりだった。大鮠一ダース分の熱狂は、カジキマグロ一匹の栄誉に匹敵すると、さもそういわんばかりの手柄顔だった。」(「影裏」より抜粋)
と表現する著者は渓流釣り愛好家に間違いありません。

1946年創刊当初の月刊つり人には
井伏鱒二、森下雨村、瀧井孝作、土師清二、サトウハチロー
といった著名作家の原稿も多く
開高健や西園寺公一の対談等も載っていました。

釣りは文学であり
中でも渓流釣りやアユ釣りを題材にした
釣り小説、随筆の名作は多いです。

沼田氏には、これからも釣りをテーマにした小説を
書き続けてもらいたいですね。

(文中敬称略)