それにしても
この春の気象は異常だ。
なぜ、連日のように雨が降る。
なぜ、連日のように風が吹く。

せっかく段取りした取材が
次々と中止を余儀なくされる。

今日もそうだ。

本来なら、都心からクルマで
3時間ほどのk川へ行くはずだった。
ヤマメの尺上どころか、
40cmオーバーがコンスタントに出ているのだ!

しかし、この雨ではどうにもならん。
長年連れ添ったニコンF3チタンならまだしも、
昨今のひ弱なデジカメは水に弱い。
(50万円以上する防塵防滴に優れたハイスペックモデルは別だが…)

やむなく、取材は仕切りなおし。
そぼ降る雨の神保町へ。

野郎だけということもあるのか
雨の日の編集部はやたらと蒸し暑く
椅子に座っているだけで汗が浮き出てくる。

「あ〜、喉渇いた」

というわけで、野郎4人で新橋へ繰り出した。

新橋というと聞こえはいいが、
我らが向かうは負け組み御用達の
ラーメン屋に毛が生えたような中華料理店。

家では節約のためビールは飲まないが、
みんなで頼めば怖くないとばかりに
最初は生ビールで乾杯。
その後は、ぐるナビクーポン券と引き換えに
無料でついてきたつまみを食べつつ、
ネガティブ自慢に華が咲く。

「オレはまだ3食ありつけるだけ幸せだよ。
○○なんて米すら買えないらしいぞ」
「いや、まだいいよ、○○なんて、
家賃3万円のアパートに住んでるんだけど
引っ越したときトイレに花束があったらしいぞ」

なんて話に勇気付けられた勢いで、お会計。

緊張の瞬間。

伝票の下部に目を走らせると
10100円という数字。

痛ッ!

やっぱり新橋は高いゼ。
一番よく食べた僕ともう一人が3000円を
払おうとすると、
「いいよ、均等にいこうと」
と神の声。

「マジッっすか、いいんすか」
と相手の気が変わらないうちに、お釣りの500円を握り締めた。

うれしかった。

ささやかな男気に心が潤った34歳の春。