世間はゴールデンウイークで浮かれているようだが
月刊誌を作っている僕たちには無縁である。

本日も当たり前のように出社すると
当たり前のように、編集部にはいつもの顔ぶれ。

サトウは、今日も顔色が悪い。
進行役のマノは
当たり前のように印刷屋との約束を反故にしたサトウを
低く冷たい声で詰問している。

ゴルゴ13を彷彿させる声音だ。

そういえば、
明日はマノとサトウはマルイカ釣りの取材に行くはずだ。

「サトウ、明日はマルイカだったよな」
「はあ、そうですけど」

「いいなあ、マルイカ釣れているみたいじゃないか」
「はあ、そうみたいですね」

「よしっ、じゃあ明日、君たちの帰りを待っているから
マルイカを少し持ってきてくれよ」
「はあ、何のためにですか?」

……。


「なあ、マノ、いいだろう、マルイカ少し…」
「フフッ」

……。

そうだよな、
編集長っていったって
メシをおごるわけでも
酒を飲ませるわけでもないもんな。
毎日、小言ばかりいって
働きバチのように働かせて
俺にマルイカをもらう資格なんてないよな。

俺が前々編集長の元へ
小国川のアユや
鴨居のマダイや
伊豆大島のメジナや
須崎のイサキを
嬉々として献上しにいったのは、
日ごろから、いろいろと面倒みてもらってたからだもんな。

それが、社会ってもんだよな。

でも、
「何のためにですか?」
はないと思うんだけどなあ…
(山根)