22時30分。
この時間に家にいるのは
なんだか久しぶりである。
家の外ではコオロギが断続的に鳴いている。
窓から静かに入ってくる夜風が心地いい。
未練がましく出しっぱなしにしていた
アユ釣り道具を片付けるときがきたようだ。
それにしても、静かな夜である。
本を読もう。
釣りの本はたくさんあるが
僕が好きなのは佐藤垢石である。
小社の創設者でもあるが
垢石の随筆は今読んでも最高に面白い。
アユ釣りの余韻が残る秋に読むなら
垢石釣り紀行がオススメ。
中でも
垢石の初期の名作といわれる
「諸国友釣り漫遊記」
では、魚野川や神通川(宮川)、長良川、藁科川、興津川、狩野川、酒匂川などなど、今でもよく知られたアユ河川が出てきて
古き良き時代のアユ釣りの世界を容易にイメージできる。
垢石は昭和31年に69歳で死去するのだが
まあ、その時代に、なんと色々な場所に釣りに行っていることか。
国内はもとより、海外の辺境にも足を伸ばしているのだ。
交通網の発達した今だったら
全世界を釣り歩いたに違いない。
よし、自分も垢石を見習って
国内外を飛び回るゾ〜!
という淡い期待を抱きつつ
じっと手を見る秋の夜長…
(山根)