北里大学3年生のイシダ君が
出版業の勉強をしたいと
夏期の2週間、バイトにやって来た。
今どきの若者にしては礼儀正しく
なかなか骨のありそうな青年だ。
日曜日の夜には高速バスで三陸海岸に帰ってしまう。
一生懸命頑張ってくれたことだし
最後くらいは、いい所に連れて行ってあげよう。
というわけで、新宿へ向かった。
夏休みということもあり
夜の歌舞伎町は、いつにも増して若者たちで賑わっていた。
行き交うギャルの露出度は高い。
汗でしっとりと濡れた柔肌は
6寸ほどの天然ヤマメのように艶々輝いている。
コマ劇場を過ぎると
花道通りに突き当たる。
風林会館と西武新宿線の駅ビルを結ぶ道で
ホストクラブやキャバクラが軒を連ねる。
目当ての店は
花道通り沿いの一角に
天然アユの追い星のような
黄色い看板を掲げている。
ラーメン二郎。

ラーメン野菜マシマシ
イシダ君はラーメン好きが高じて
ラーメン屋でバイトをしていたという。
しかし、まだ二郎は食べたことがない。
ならばと神保町店へ行ったものの
あいにくとお盆休み。
そこで、歌舞伎町まで足を伸ばしたというワケ。

念願のラーメン二郎を前にするイシダ君
イシダ君は二郎用語でいうところの
小ダブル野菜マシマシ
(普通ラーメンチャーシューダブル野菜大盛)
を見事完食。
「ご馳走様でした!」
と勢いよく店から出てきた彼の顔は
何かを成し遂げたという達成感に包まれていた。
頬を流れ下る汗の滴には
ネオンの光がキラキラと輝いていた。
(山根)